※ご注意ください。 弟消失ネタです。兄さんのはよく見かけるけど弟はあまり見たことないなって思ったら見たくてしょうがなくなってしまった故、妄想のままに書き殴りました。そして中途半端におわりますorz 全て捏造、妄想です。雰囲気でお読みください。 とりあえず、消えることが決まっちゃったけど、兄さんまで巻き込みたくないので、誰か兄を幸せにしてくれる人を探して、自分はこっそり消えてしまおうとする弟の話。 独→←普(露×普)という感じです。 オチまで妄想しきれなかったので続きませんが、とりあえず兄さんがめっちゃ泣くことは決定しています。兄さんを泣かせたい…(歪)
自分を構築しているものが、ひとつずつ、ひとつずつ、剥がれ落ちていくのがわかる。
ほろり、ほろりと。ゆっくり時間をかけて。
その采配の意味を、知ることは無いけれど。
残された時間を、全て。己の懺悔の為に使う。
柔かな金糸の髪がふわりと揺れた。
自分のものよりも色素の薄いそれは、光の当たり具合によって白銀に輝く。まるであの人のようで、ひとつの中にふたりがいるような錯覚に、歓喜を憶えた。
鳶色の瞳。碧でも紫紅でもない色は、国の新たな可能性と未来を現わしているようだ。
陶磁器のような肌。穢れなく、透き通るように美しい細やかさは触れるのさえ躊躇われるほど。
まだ少年の姿をしているが、現在、国の情勢はすこぶる良い。きっとすぐに立派な成長を遂げるだろう。
自分の形が無くなっていく速度と共に。
ルートヴィッヒは少年の前に跪き、差し出された幼い手を取り、きめ細やかな甲に口付けを落とした。
「―――お待ちしておりました。我が祖国よ」
ドクン。
心臓が激しい動悸を訴えた。突然のことに、ギルベルトはシャワーを浴びたばかりの体にバスローブをなんとか羽織りながらよろめくが、そのまま体調が悪くなるということもなく、むしろ、内から力が漲ってくるような高揚感を覚えた。
同時に襲ってくるのは、不安。
亡国の己が今更力を蓄えるなど、在り得ないことだった。解体を宣言されたある日から消滅する覚悟はとっくに出来ているけれど、逆の現象は全く想定外だ。理由がさっぱり見当たらず、けれど、自分に影響を与えられる要素などひとつしかない。
(ヴェスト……?)
弟に何かあったのだろうか。
長期の任務に就くと告げてベルリンから離れ、ボンに滞在している弟とは、もう3か月も顔を合わせていない。それどころか自分は今、ベルリンの自宅ではなくロシアにいる。暫く一人だと告げれば、遊びに来いと恋仲のイヴァンに誘われた為である。
今は弟の一部となった自分が長くドイツから離れることは出来ないが、数週間単位であれば問題は無い。ロシアへ滞在していることも、弟にはちゃんと伝えている。
電話でだって、定期的に連絡を取っていた。けれど、直近で連絡を取った日はいつだっただろうか。思い出せない。思い出そうとすると頭がひどく傷む。
訳が分からず、焦燥のままに携帯電話を掴んで弟へ電話をかけた。
『――現在、この電話は使われておりません』
「は……?」
間違ってしまったかと、一度通話を切り、もう一度、今度はきちんと番号を確かめて電話をかける。けれど、返ってきたのは同じアナウンスだった。
使われていないってどういうことだ。
番号を変えた?それなら事前に知らせてくるだろう。やはり、弟に何かあったのだ。
ギルベルトはバスローブを脱ぎ捨てると、乾ききっていない体を着替えの服に突っ込んで寝室へ戻った。ベッドでくつろいでいたイヴァンは、先程まで蕩けた色を帯びていた相手が今にも戦場へ赴くような様相をして帰ってきたものだから、目を丸くして問い掛けた。
「どうしたの?そんなに慌てて」
「ドイツに帰る」
「今から?こんな深夜に空港に行っても出てる便なんか無いよ」
「始発まで待ってる。それか、他にルートがあれば教えてくれ」
コートを着込み、財布だけ確認して少ない荷物を持って出て行こうとするギルベルトに、イヴァンは慌ててベッドから降りて追いかけた。
「ちょっと待って、何があったの?」
「わかんねえ。わかんねえから、確かめに帰る」
「……どういう意味?」
「弟と連絡が取れない。あと、体がおかしい。あいつに何かあったとしか思えねえ」
問い掛けに返ってくるギルベルトの言葉に、イヴァンは目を見開き、唇を噛みしめた。
廊下を突き進むギルベルトの腕を掴み、引き寄せると、ギルベルトは困ったようにイヴァンを振り返った。
「イヴァン。急に帰るのは悪いが、またちゃんと連絡するから、今は……」
「体がおかしいって、……どういう風に?」
「どういう風って……なんつうか、体が軽いんだ。力が有り余ってる感じがする。……まるで」
「昔に戻ったみたいに?」
今度はギルベルトが目を見開いた。その反応を見て、イヴァンは確信する。
(ルートヴィッヒ君……)
もう、何年前になるだろう。彼の口から告げられた言葉。懇願された約束を、受け入れたのは。迷う間も無く頷いた。それは自分が、願ってやまないものだったのだから。
けれど、いざその時が訪れたのだと思うと、どうしようもない悲しみがこみ上げてくる。
それは同じ国として、仲間としての、純粋な喪失感からくるものだと思った。
だって、自分は彼を羨むことはあっても、決して憎んでなどいなかったのだから。
「……イヴァン?どうし……」
俯き、瞑目してしまったイヴァンにギルベルトが眉を顰めてのぞきこむと、そのままきつく抱きしめられる。
「イヴァン、」
「行く必要は無いよ」
「……え?」
「ドイツに戻る必要はない」
「何……何、言ってるんだ……?」
「君はもう、僕の一部になったんだよ。ギルベルト」
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こんな話を読みたい…な(^p^)